世界一美しい 国歌「君が代」の英訳

日本人のみならず、世界中の人と共に歌える
まったく新しい「君が代」の英訳を目指しました

「君が代」を英訳した理由

あなたは、日本の国歌「君が代」について、子どもや外国人でも理解できるように説明することができますか? そう問われたときに、一体どれだけの日本人が自信をもって「YES」と答えることができるでしょうか。日本人は、あまりに日本のことを知らなすぎる。それが疑いようのない事実だと思います。

そこで今回、私たちは幾千年の歴史を誇る日本の精神文化のすばらしさを改めて見つめ直すために「君が代を英語に翻訳する」という企画を立ち上げました。

国歌を愛せない
国でいいのだろうか?

 わが国の国歌「君が代」といえば、今でも「軍国主義を象徴する歌だ」、「児童に歌わせるべきではない」と、よく物議をかもしています。

なぜ、賛否が分かれるのか?

 最大の原因は「君」という一語にあります。「君=天皇崇拝=軍国主義の象徴」と解釈されることから、危険視されることがあるからです。
 たしかに戦時中はそのような意味合いを持ったのでしょう。

しかし、それは日本に限ったことではありません。世界中どの国の国歌も軍歌のような曲調で、歌詞は〝血の臭い〟がします。むしろ「君が代」ほど穏やかで厳かな気持ちになれる国歌は他にないでしょう。

もともと国歌「君が代」は平安時代913年頃に成立した『古今和歌集』に載せられた歌です。作者は不明。世界の国歌の中で最も古い起源をもちます。当時から「お祝いの歌(賀歌)」として広く慕われていたそうです。

私たちは、いかようにでも解釈できる詩(和歌)だからこそ、令和の時代にふさわしい〝平和的で美しい解釈〟を生み出すことが大切だと考えました。

そこで今回の企画が生まれたのです。


 日本国歌の英訳という大業に挑んでくださったのは、英語界では神様的存在である同時通訳の達人・松本道弘先生です。そして、完成した新たな「君が代」の英訳は、あまりに美しいものでした。

同時通訳者 松本道弘

PROFILE
1940年大阪生まれ。関西学院大学卒業。日商岩井に勤務する間に、海外渡航の経験なしに独力で英語を磨く。その後、西山千氏(アポロ月面着陸時に、日本で初めて英日同時通訳)に師事し、その推挙でアメリカ大使館の同時通訳者となり、後にNHKテレビ上級英語講座の講師を勤める。日本にディベートを広めたことでも知られる。紘道館館長、国際ディベート学会会長。英語教育や日本文化に関して190冊を越える著作がある。 2019年に大学受験塾ミスターステップアップの特別顧問に就任。80歳から受験英語の改革に挑戦し、“動脈”英語を受験生にも指導する。

松本名人による日本語と同じ旋律で
歌うことができる画期的な英訳

日本には古くから「言霊(ことだま)」という思想があります。日本語の音の響きには、目に見えない不思議な働きが宿ると信じられてきたのです。

つまり、それぞれの語彙が持つ辞書的な意味に加えて、〝音の響き〟にも隠された意味が込められているのです。

例えば、本来の「キミ」は必ずしも天皇のみを指すのではありません。『源氏物語』においても「朝顔の君」、「藤袴の君」など、美しい女性は「キミ」と呼ばれています。「君」は「愛しい人」のこと。

「君が代」とは、あなたにとっての「愛しい存在」へ捧げる祝いの歌なのです。

 そして、この音の“響き”は日本神話に登場する最初の夫婦神

イザナギ → キ(男性性)
イザナミ → ミ(女性性)


の合わさった言霊です。これは男女のみならず、人と人、組織と組織、国と国…、価値観の違うもの同士を結びつける働きの象徴。

日本列島を産んだ夫婦神


 このように“音”に意味があるからこそ、松本先生はできる限り日本語の音をそのまま活かし、かつ音楽的要素を取り入れて翻訳されました。
 なんと、驚くべきことに原曲のメロディーでそのまま歌うことができる画期的な英訳になっています。

歌詞の紹介

超訳「君が代」 訳:松本道弘

KIMIGAYO national anthem of Japan(国歌)

君 が 代 は
Hear me out we’ll hear YOU loud.

千 代 に  八 千 代 に
Thousands’ years of rain,thousands’ sunlights.

さ ざ れ 石 の
Thousands’ rays wishing you.

い わ お と な り て
Your old rock, firm here to stay.

苔 の  む す ま で
Weep no more; weave us moss nice and green.

英訳の意味

わたしの声を聞いてほしい
そして聞かせてほしい、あなたの凛とした声を
何千年の雨、何千年の陽の光をたくわえた
愛しいきらめきは世界を照らし
岩はしっかりと大地を守っている
さあ、哭(な)くのはやめて
美しい緑の苔を織りなしましょう

歌詞の解説

 「君」は、君主(天皇)を意味する言葉です。同時に君主のみならず、愛しい人を「君」と呼ぶ。そこに、どちらが上、どちらが下、という上下意識はありません。その一体感ある〝和〟の精神を、私(hear me)とあなた(hear you)で表現しました。誰もここに軍国主義の面影は感じないでしょう。

 全文を通して、耳に心地よく響く〝快音調〟を意識しました。一行目は、outとloudで韻を踏み、呼吸に優しいリズムになっています。
 日本には古くから「言霊信仰」があります。五十音の音の響きそれぞれに意味があり不思議な力が宿ると信じられてきたのです。そのため今回の翻訳においては、歌に込められた意味のみならず、〝音〟も可能な限り原曲に近いものになっています。たとえば「さざれ石=Thousands’ rays wishing(サザレイシ)」の音になっている。これは世界初の試みでしょう。

京都・護王神社にある日本一大きな「さざれ石」

 最後の行。「green(緑)」は日本では〝美〟と捉えられますが、欧米では嫉妬や恨みと結びつきやすいものです。「green with envy(嫉妬に狂う)」といった表現があるように。また「苔」は日本では「苔が生えるほど平安が永く続く」という縁起のいいものとされますが、欧米ではネガティブに捉えられることが多い。「rolling stones(苔が生えないように激しく動き回っている様)」の方が価値があるとされるのです。そのイメージを一転させるため、単なる「green」ではなく、「nice and green」で締めくくりました。

 「Weep(哭く)」は「Cry(泣く)」ではありません。声もあげず、涙も見せず、心で泣くことです。この一節を書きながら「我が身はどうなってもいいから、国民だけは救って欲しい」と、マッカーサーの前でも巌の如く動じなかった戦後の昭和天皇を偲びました。そして「weep」と「weave(織りなす)」をかけました。日本は、タテ糸(天の意図)とヨコ糸(人々の意図)を綾なして、美しい景色を結びあげてきた国です。その営みが永遠に続くよう願いを込めて、“e”を“eee”と引き伸ばすように歌っていただけたら幸いです。

一般的な英訳との比較

ここで一般的に知られている英訳をご紹介します。

 「thine(ザイン)」は主に聖書で使われる言葉ですからキリスト教(一神教)の神を信じる「あなた(汝)」という意味合いがあります。こちらも趣向の凝らされた荘厳な翻訳ではありますが、西洋的な視点で直訳されているため、歌の本質に触れているとは言い難いでしょう。

楽譜ダウンロード

当英語版・君が代は、皆さまに楽しんでいただけるよう無料公開しています。学校や企業内での式典、国際交流イベント、公演などでご自由にお使いいただき、日本文化の素晴らしさを発信するために役立てていただければ幸いです。ただし、使用に当たっては以下の禁止事項にお気を付けください。

禁止事項:音源等の改編、政治・宗教・営利を目的とした使用
     その他法律上の規定に違反する行為など。

上記の行為を著作権者の許可なく行うと、著作権者の権利を侵害することとなります。なお、著作権の侵害や禁止行為により発生する争いについて弊社は一切責任を負いません。



歌い方サンプル

君が代 伴奏あり
君が代 アカペラ

英訳を支えた6つの原則

KIMIGAYO national anthem of Japan
In praise of world peace yet to come upon the sacred moss-covered rock
The Six Principles for Poetic Translation;

① 個人の想いに祖国愛を込めて、どこかにいる隠れた英雄のために翻訳しました。
Personally and proudly interpreted and colloquially translated for an unsung heroic figure next-door.

② 価値観やイデオロギー(政治的思想)をゼロベースで、主語抜きの文法を遊ばせました。
Totally, value-free (grammatically subject-free).

③ 幾千年の歴史を誇る精神文化に忠実に、超訳を試みました。
Creatively translated, true to the ethos of our centuries-old culture.

④ 音楽要素を取り入れ、快音調に英訳しました。
Euphonically (musically) translated ―rhythm, melody and harmony.

⑤ 誇りと歓喜の力を込め、鈴虫の鳴き声をBGMにして超訳しました。
Euphorically (proudly) translated, while listening to the music played by the bell-ring (suzumushi)crickets brought here from Matsukawa-mura, Nagano pref.

⑥ 肩の力を抜いて、無私の境地で超訳を試みました。
Effortlessly (economizing big words) translated on an empty mind.

世界の永遠の平和を願って

わたしたちは、この度の英訳版「君が代」を世界の平安を祝う歌として、広く伝えたいと願っています。

日本人のみならず、様々な国の方と境目を越えて共に歌いたいですね。

どうか、この快い“響き”とともに世界に平安が広がり永く幸せが続きますように。